■ 消費税10%初日、西胆振の小売店では大きな混乱なし
【2019年10月2日(水)朝刊】

前日まで駆け込み需要があった小売店では客が少ない時間帯もあった
 消費税率が1日、5年半ぶりに引き上げられ、「消費税10%時代」が始まった。西胆振地方では、軽減税率導入による複雑な税制度とキャッシュレス対応による大きな混乱はなく、静かな幕開けとなった。一方、前日まで駆け込み需要でにぎわった小売店は一転、客足が落ち込んだ。増税で世帯負担が増し、10月以降は消費者の財布のひもは固くなりそう。

 ●セール展開

 「委託販売なので商品を一点一点取引先に確認した。直前まで連絡が付かない所もあり大変だった」。室蘭市祝津町の道の駅「みたら室蘭」内テナントは増税対応に追われた。

 道の駅飲食コーナーでは店内外飲食を同じ価格に設定。従業員が「持ち出し」と「店内」の飲食をレジに打ち込む必要がある。スタッフの富田弘美さんは「間違いなく対応できました」とホッとした表情を見せた。

 隣接する食事処(どころ)「くじら食堂」(宇佐美聡子店長)は持ち帰りメニューと店内飲食もできるため「初日は大丈夫だったが、お客さんが多くなる今週末が不安」(担当者)と懸念を示した。

 酒店や小売店は駆け込み需要の反動減が見られた。9月末まで売り上げが伸びた家電量販店「ケーズデンキむろらんパワフル館」(東町)でも「9月の忙しい日々からは想像できないほど客足が伸びなかった。落ち着いたら売り上げが戻ることを期待したい」(三浦雅征店長)。

 伊達市梅本町の酒類専門店リカーマックスは「メンバーズデイ」と銘打ったセールを展開。入澤淳雄さんは「昨日までビールを箱買いする人が多くいたが客は少ない」と話した。

 反動減を抑えようと早くも販売促進策を打ち出すスーパーも。西胆振3市で7店舗のコープさっぽろは1〜3日間にわたる「創業祭」を開始し、イオン北海道は「火曜市」を実施した。室蘭店の澤喜幸店長は「客足は少し落ちたが問題はない。1週間ほど見ないと詳しい状況は分からないが、これからも魅力のある企画を打ちたい」と力を込めた。

 ●飲食店では

 飲食店では持ち帰りなど軽減税率の対応を進め、企業努力を続けている店もあった。「浜勝」(母恋北町)はメニューを一新し、室蘭やきとりやフライドポテトなどは店内飲食と同じ価格で提供。浜田勝彦代表は「客は減っている。増税は正直厳しい」と話した。

 「蘭たん亭」(輪西町)は店内販売の土産用「室蘭カレーラーメン」は8%で販売する。高橋良一代表取締役は増税初日のランチタイムを終え「増税による混乱はなかった」と振り返った。

 室蘭などで低所得者や子育て世帯向けのプレミアム付き商品券の販売が始まったが、消費者からは家計の負担を気にする声が聞かれた。70代の主婦は「これ以上負担が重くなるのは困る」と話した。
(粟田純樹、北川誠、坂本綾子、西川悠也)


◆―― 年金目減り 増す負担、低所得者 大きい2%

消費増税により年金で生活する高齢者や生活保護世帯などから不安の声が出ている(写真と本文は関係ありません) 1日に消費税が10%に増税され、年金で生活する高齢者や生活保護世帯など低所得者から不安の声が上がっている。収入の柱となる年金や保護費は少なくなる一方で、税率増により食費などの生活費は負担感が増すことは必至。同時に医療費なども引き上げられることから、普段から倹約を行っている人からは「たかが2%だが、差は大きくこれ以上何を切り詰めればいいのか」と戸惑いが広がっている。

 登別市柏木町に住む北原英気さん(77)は年金で生活する。これからの食費と医療費、高熱費などが気掛かりだ。これまでも切り詰める努力を続けてきたが、消費増税でさらに物価が上がれば、今後数千円の節約を強いられる。

 2019年度の公的年金の支給額を0・1%引き上げられたが、物価上昇に伴い、実質的な年金水準は目減りしている状況だ。「これからどうやって生活していくべきか悩んでいる」と北原さん。

 その中で気掛かりとなっているのが医療費だ。公的医療保険でカバーされる医療費は消費税の課税対象外だが、医療機関が業者から仕入れる物品などは消費税がかかるため、国は10月から診療報酬を増税分引き上げる。初診料は60円、再診料は10円高くなる。北原さんも定期的に通院しており、「増税分は社会保障の充実に使われると言うが実感はない」。

 室蘭市知利別町で1人暮らしする女性(82)も年金生活者の一人。食品を1日千円程度に抑えるよう努めているが、税率が10%になったのでやり繰りはさらに難しいという。「これ以上の節約はできない」とこぼした。

 病院に通うことも増え、医療費は多い月で6〜8千円ほど。「なぜ、年金暮らしの高齢者など低所得者ばかり苦しい思いをするのか」とため息をついた。

 公的医療保険は、国が一律に定めている公定価格となっているため、今回の値上げは2年ごとの改定の間に行われる“臨時の値上げ”だが、2人は納得していない。

 生活保護受給者からも悲鳴が聞こえる。高校生と中学生の2人の子を育てる市内の男性(41)は、保護費と妻のパートの給与計22万円で生活をする。家賃や食費などの生活費は月20万円を超える。子どもたちは育ち盛りで食費や衣料費は増える一方だ。「消費税は子どもたちにもかかる。負担は日に日に重くなっている」と肩を落とした。
(粟田純樹)


◆―― 節約で観光客対応、「価格統一」混乱を防ぐ

テークアウト、イートインへの対応を分かりやすくするなどして観光客を出迎えている=登別マリンパークニクス 消費税率の10%移行に伴い、登別市内では観光客への分かりやすい対応もポイントにあるよう。可能な限りの対策で節約を心掛けているようだ。

 国税庁がまとめた軽減税率の事例集では、遊園地で食べ物を購入すると、食べ歩きの場合は税率8%、管理するテーブルやいすで食べる場合には10%となる。コンビニエンスストアなどでの持ち帰りは8%に据え置き、イートインは外食となり10%で、事業者、消費者双方にとって複雑化している。

 登別マリンパークニクス(登別東町)は、4月に入園料を改定したことで、10月からの変更はなし。レストランメニューの一部は改定したものの、ワゴンで扱う商品の販売価格は据え置いた。海獣飼育などに必要な光熱費増などもあるが、須川英治支配人は「モニターで電気使用量をチェックしたり、照明をLEDに変更したりと、増税以前から行っている取り組みを今後も進めます」と話した。

 就労継続支援B型事業所・フロンティア登別が運営するハンバーガーショップ・イレンカ(登別温泉町)は、テークアウト、イートインの双方に対応しているが、販売価格は統一した。同施設の山田大樹施設長は「外国からの観光客が多いエリアなので、購入する人が混乱しないよう分かりやすくしました。今まで通り地元食材の味を楽しんでもらえれば」と述べた。
(石川昌希)


◆―― 消費税経営圧迫、果樹園で入園料見直しも

真っ赤に熟したリンゴに手を伸ばす女性。果物狩りは税率10%となった=1日、タカシナ観光果樹園 胆振屈指の果樹産地、壮瞥町。町内の果樹園でつくる、そうべつくだもの村は、果物狩りが真っ盛り。消費増税が実施された1日、果物の持ち帰りは8%のままだが、その場でもぎ取って食べることのできる入園料は10%に。同村は今季、混乱を避けるため入園料を据え置いて対応するが、資材の高騰などから来季は見直しを考えている。

 18戸で構成するくだもの村。国道453号を走ると両側に真っ赤に色づいたリンゴが目に飛び込む。今はリンゴのほかプルーンなどがシーズン。休日はもちろん平日も甘い香りに誘われるように道内各地のナンバーの自動車や大型車が行き交い、にぎわいを見せる。

 「(果物狩りの)シーズンの途中もありますし、煩雑化を避けたかった」。同村の村長でタカシナ観光果樹園(滝之町)の高階明修さん(56)は、入園料を据え置いた理由を説明する。

 同村の取り決めで、入園料は大人880円など(サクランボ、イチゴ狩りは1080円など)。今季は料金を改定せず、2%の増税分は農家それぞれの負担とした。

 ビニール製品や石油などをはじめ、資材や流通経費などは高騰を続けている。さらに増税も重なり経営を圧迫することは間違いない。高階さんは「これから来シーズンへ向け会議などで入園料の見直しを進めていく」と話した。

 一方で、苫小牧市の会社員、今寛行さん(43)は「年に1、2回来る程度なので、入園料が上がってもあまり気にならないと思う」と話した。同村事務局のNPO法人そうべつ観光協会によると、増税に伴う混乱はなかったという。
(奥村憲史)

【写真=(上から順に)前日まで駆け込み需要があった小売店では客が少ない時間帯もあった消費増税により年金で生活する高齢者や生活保護世帯などから不安の声が出ている(写真と本文は関係ありません)、テークアウト、イートインへの対応を分かりやすくするなどして観光客を出迎えている=登別マリンパークニクス、真っ赤に熟したリンゴに手を伸ばす女性。果物狩りは税率10%となった=1日、タカシナ観光果樹園】




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