
登別や白老沖などの胆振太平洋海域(室蘭市―むかわ町)では近年、サメが魚介類を狙って網やかごなどの漁具を壊す被害が後を絶たない。いぶり中央漁業協同組合(松田嘉邦代表理事組合長)は、はえ縄によるサメの捕獲事業を実施しているが、被害額は2年連続で3千万円以上に上り、漁業者にとっては大きな痛手。10月には主力のスケソウダラ刺し網漁の解禁を控え、今後の被害拡大を心配している。
同漁協によると、主にスケソウなどの刺し網や、毛ガニ漁のカニかごが壊されるなどの被害が多いという。被害額は2017年度(平成29年度)が4089万4300円、18年度が3323万6千円と2年連続で3千万円を超えた。
捕獲事業は胆振総合振興局が主導し、白老町や同海域にある4組合が協力。特別採捕の許可を得て、同漁協所属の2隻がはえ縄漁を行っている。今月3日には、白老港に帰港した2隻から体長1〜2メートルほどのヨシキリザメが大量に運ばれた。中には100キロ以上ある大型の個体もあり、この日だけで100匹は優に超える数を捕獲した。
第115宝生丸の中市徳美船長(61)によると、ここ10年来サメの数は急増。これまで5、6年は使用できた網が最近では2回ほどの使用で食いちぎられてしまうという。「食いちぎられた網は補修するなどして対応しているが、限界がある。漁業者にとって打撃が大きい」と頭を抱える。
一方、同漁協は10月から始まる主力のスケソウ刺し網漁への影響を懸念。「今は被害を抑えるためにやれることをやるしかない」と話す。
一方で、漁業関係者は広域での取り組みの重要性を指摘する。現在、行政では白老町のみが補助金で対応している状況で、中市船長は「いぶり中央漁協は登別市と白老町にある。せめて登別もサメの捕獲に対する補助をしてもらえれば、まだまだ活動できる」と訴えている。
(高橋紀孝)
【写真=漁船から引き揚げられるヨシキリザメ=3日午前10時50分、白老港】
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