■ 室蘭港が新時代へ、フェリー航路復活し宮古へ第1便
【2018年6月23日(土)朝刊】

フェリーふ頭を出港するシルバークィーン=22日午後8時、室蘭港
 川崎近海汽船(東京)が室蘭市と岩手県宮古市を結ぶフェリーが22日、就航し、順調に滑り出した。2008年(平成20年)に室蘭港の全フェリー航路が廃止となり10年。再び本州を結ぶフェリー航路が復活した。同日午後8時には、室蘭発の第1便が予定通り、宮古港に向けて出航。室蘭港の物流は新時代を迎える。

 初日は午前8時の定刻に、同社のフェリー・シルバークィーン(7005トン)が出航。宮古港の藤原ふ頭には市民らが大勢詰め掛け、大漁旗がたなびき、青いタオルが振られる中、第1便が海原へと針路を進めた。 

 同日午後6時、同船は室蘭港フェリーふ頭に着岸。トラックや乗用車などが続々と船を後にした。山本正コ宮古市長らの下船を、青山剛室蘭市長らが出迎えた後、フェリーターミナルではセレモニーが行われた。

 青山市長は「室蘭にはフェリーが似合います。歴史的な日の喜びを分かち合いたい」と伝え、「隣町宮古との力強い交流を、実際にうかがって確認してきたい」とあいさつ。山本市長は「こんなにうれしい日はない。両市の絆、和を将来に向かって続けたい」と伝えた。
室蘭からの第1便の出航をペンライトや旗を振って見送る市民ら=22日午後8時5分、室蘭港フェリーふ頭
 会場を埋めた人たちの熱気に、川崎近海汽船の寅谷剛常務取締役は「たくさんの皆さんのお出迎えに感激しています。宮古室蘭航路は皆さんのまちのフェリーです。これから皆さんと一緒に大きく羽ばたきたい」と述べた。

 フェリーとターミナルを結ぶ空中歩廊では、室蘭港を愛する会と市内のスクール児童館の子どもたちが、「宮古」に語呂合わせした385本の手作りした国際信号旗を振り下船客を迎えた。両市の市長、市議会議長、商工会議所の会頭がテープカットし、室蘭第1便の出発を祝った。

 シルバークィーンは定刻の同日午後8時、見送りに詰め掛けた市民らのペンライトが揺れる中、宮古港に向けて出航。川崎近海汽船によると、同日の往復便とも旅客はほぼ満席。トラックなど貨物は「まずまずの滑り出し」といい、今後の利用増に期待を込めた。

 同フェリーターミナルでは、みなとまちづくり女性ネットワークのメンバーがヤヤン昆布を使ったうどん385食を振る舞い喜ばれた。市交通安全推進協議会はターミナル近くの沿道で、下船するトラックなどに旗の波で安全運転を呼び掛けた。室蘭市内の飲食店では早速、室蘭やきとりを味わう宮古市民の姿も見られ、活気づいていた。
(粟島暁浩、鞠子理人)


◆―― 復活の立役者が固く握手
室蘭港に入港したフェリーをバックに握手する箱田さん(左)と寺島さん=22日午後5時56分、室蘭港フェリーターミナル
 岩手県宮古港に向けて22日夜に出航した室蘭発の第1便に、フェリー航路復活の立役者の姿があった。復活が絶望視されていた中、官民協働の粘り強いポートセールスが実った陰には室蘭市の港湾担当者の戦略があり、念願の新たな船出を喜び合った。

 2008年(平成20年)11月、東日本フェリーがフェリー事業を撤退。室蘭港は最大5航路あったが、唯一だった室蘭―青森航路も失った。

 燃油の高騰と慢性的な赤字。同社を引き継いだ道南自動車フェリー(現津軽海峡フェリー)と市は勉強会を持ち、年7億円の赤字解消から航路復活を探る。半分以下にできる試算を得るも4回で協議を終えた。

 ● 国から出向

 物流の中心は大消費地・札幌との距離の近さから「苫小牧港一択」(室蘭のトラック業者)ともいわれた。市のポートセールスに船社も「赤字航路をなぜうちが」という反応。「心が折れそうだった」(市関係者)

 “視界不良”の中、国土交通省から市に出向し12年から3年間、室蘭市港湾部長を務めた箱田厚さん(45)=現同省航空局課長補佐。入庁は物流への関心からだった。「物流は経済の血液。それを支える運転手の負担が重くなっている課題を感じていた」。同省北陸地方整備局(新潟)時代、弓なりの日本の内側・日本海航路の効率的な物流を研究し、業界の知識もあった。

 着任早々、関越自動車道で高速バスの居眠り運転事故が発生。労務管理の必要性がクローズアップされ象徴的な出来事となる。

 当時室蘭市副市長の寺島孝征さん(73)、市港湾部主幹の西舘武志さん(49)と3人で戦略を練った。まず室蘭港を利用していた業界の声を拾った。「利用者の目線に立つこと。使いやすい時間、料金、施設を知らなければ」(箱田さん)と、すぐ道内貨物動向レポートを完成させた。

 ● 休息厳格化

 「苫小牧港でフェリーが満席なら函館まで走らなければならない」など不満は4割を超えた。苫小牧―八戸は8時間、苫小牧―仙台は15時間で、運転手が拘束時間を除いて8時間の休息が取れる効率的な航路はなく「中距離フェリーの需要は増す」と踏んだ。8時間休息の厳格化も追い風となる。

 この調査結果を根拠に積極的に船社を回った。14年に入り潮目が変わった。

 川崎近海汽船へのアプローチは、同社保有のフェリーを海外に売却するという新聞記事が糸口となる。新造船導入で役目を終える船の活用に着目したからだ。東日本大震災からの復興に向けフェリー就航を求める岩手県の動きも加速。10時間の宮蘭航路に光が差し、誘致期成会、港湾関係企業の活動も弾みがついた。

 ● 吉報に歓喜

 14年12月24日、室蘭市役所市長応接室。川崎近海汽船から宮蘭フェリー就航を検討する報がもたらされた。青山剛市長は年末あいさつで不在。応対した寺島さんは「やったぞ!」と顔を紅潮させ、「よーし!」と連呼。箱田さんらと喜び合った。大きなクリスマスプレゼントとなった。

 寺島さんと箱田さんはこの日の乗船を決めていた。「全てはタイミングだった。川崎近海汽船の皆さん、(当時担当部長の)寅谷剛常務には感謝しかない」(寺島さん)「関係機関の協力と活動が大きい。航路が続くことが大切」(箱田さん)と願い、輝きを取り戻したフェリーターミナルで握手。在職中の眉間のしわは消え、晴れやかだった。
(粟島暁浩)


◆―― まちが歓迎ムード

デッキカーリングを楽しむ宮古RCメンバー=午後8時半、室蘭プリンスホテル
両市と両商工会議所の発展を願った歓迎交流会=午後8時5分、室蘭プリンスホテル
調印書に署名し、笑顔を見せる(右から)早川さん、加藤さん、斉藤大統領=午後7時20分、室蘭市中島町
室蘭港と測量山をバックに歓迎ムードを盛り上げた合唱と吹奏楽演奏=午後6時20分ごろ、室蘭港フェリーターミナル


 第1便、ようこそ室蘭へ―。10年ぶりにフェリーが就航した22日、室蘭市内は宮古市から訪れた人々への歓迎ムードに包まれた。ターミナルでは中学生の演奏に合わせて市民合唱団が熱唱。商店街では宮古市の若手商業者と友好調印を結び交流を深めた。ホテルではロータリークラブや商工会議所が懇親会を開き、今後の関係発展に期待を膨らませた。

 ● RCと商議所が絆を深め合う

 中央町の室蘭プリンスホテルでは室蘭ロータリークラブ(RC、近江毅会長)が宮古ロータリークラブ(寺崎勉会長)を迎えての夜間例会を開き、室蘭RC伝統のデッキカーリングとよさこいで盛り上がった。宮古RCから会員と家族20人、室蘭RCからは24人が参加。近江会長が「今後も末永く友好関係が続くことを願っています」とあいさつ。寺崎会長は「フェリー航路を通じ世の中を、地域を、そしてわれわれ自身も変化していきましょう」と応えた。

 同ホテルでは室蘭商工会議所(栗林和徳会頭)による宮古商工会議所(花坂康太郎会頭)の歓迎交流会も開催。両会議所から約40人が参加した。栗林会頭は宮古をたたえる即興歌を披露。花坂会頭は「航路が決まって3年、長い航海だった気がします」とあいさつした。
(北川誠、鈴木直人)

 ● 共和国建国祭の初日に調印式

 Shanしゃん共和国33周年建国祭(シャンシャン共和国商店街振興組合主催)では初日のこの日、フェリーで来蘭した宮古観光創生研究会の加藤洋一郎さん(38)と早川輝さん(31)が訪れ、友好調印を行った。

 同共和国の斉藤弘子大統領と加藤さん、早川さんが、両市の商業活性化に向け協力を確認し調印書に署名した。きょう23日は室蘭工業大学明徳祭の赤フン行列などが行われる。
(池田勇人)

 ● ブラス演奏や歌で盛り上げ

 室蘭西中学校吹奏楽部(中村心音部長、35人)、ボア・ロシニョール女声合唱団(立野了子代表、17人)、北辰緑ヶ丘合唱団(辻新八代表、29人)の3団体は、高らかな音色を響かせ、歓迎ムードを盛り上げた。

 「室蘭市の歌」「未来へキラキラ」「心の中にきらめいて」などを披露。室蘭港にさす夕日を背景に、心を一つにした演奏を繰り広げ、ウエルカムの思いと就航の喜びを表した。
(成田真梨子)

【写真=(上から順に)フェリーふ頭を出港するシルバークィーン=22日午後8時、室蘭港、室蘭からの第1便の出航をペンライトや旗を振って見送る市民ら=22日午後8時5分、室蘭港フェリーふ頭、室蘭港に入港したフェリーをバックに握手する箱田さん(左)と寺島さん=22日午後5時56分、室蘭港フェリーターミナル、デッキカーリングを楽しむ宮古RCメンバー=午後8時半、室蘭プリンスホテル、両市と両商工会議所の発展を願った歓迎交流会=午後8時5分、室蘭プリンスホテル、調印書に署名し、笑顔を見せる(右から)早川さん、加藤さん、斉藤大統領=午後7時20分、室蘭市中島町、室蘭港と測量山をバックに歓迎ムードを盛り上げた合唱と吹奏楽演奏=午後6時20分ごろ、室蘭港フェリーターミナル】




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