■ 有珠山噴火想定し西胆振1市3町が総合防災訓練
【2017年10月4日(水)朝刊】

避難所にバスで到着した洞爺湖温泉地区の住民=3日午前10時18分、洞爺湖町月浦の洞爺湖温泉小学校
 有珠山噴火を想定した総合防災訓練が3日、伊達、洞爺湖、豊浦、壮瞥の1市3町であった。自治体職員や住民、自衛隊員ら777人が参加。住民避難に伴う連絡調整や避難所の開設手順などを検証し、初めて外国人を避難誘導した。一時避難した伊達市長和小学校の児童を保護者に引き渡す訓練にも取り組んだ。この中で、宿泊施設での避難誘導など災害時の実効性に課題が見えた。


◆―― 自治体の枠超え

 「噴火警戒レベルが4に引き上げられました。ただちに避難してください」

 午前9時半、山麓の1市2町が避難指示を発表し、防災行政無線やエリアメール、コミュニティFMの割り込み放送などで噴火が近いことを知らせる情報が一斉に流れ、訓練が本格的に始まった。主会場の豊浦町ふるさとドームに設置した合同災害対策本部。火山活動の概況説明や住民避難、被害状況の報告が随時飛び交い、緊張感が漂った。

 避難指示が発令された山麓の火砕サージ危険区域では、住民らが近くの集会所などに集まった後、バスで避難所へ向かい難を逃れた。洞爺湖温泉の住民13人は、月浦の洞爺湖温泉小学校に着いた後、町職員から避難所の説明を受けた。

 ボランティア協議会に所属する海老澤邦子さん(83)はこれまで訓練を支える側だったが今回初めて一住民として参加。「周りは年配の人ばかりで自分でも体験しておこうと思った。みんなで避難するのは安心感がある」と話した。伊達市長和地区連合自治会は自治会の約30人が参加。佐藤秀雄会長(78)は「自分の命がかかっていることを忘れず行動しなければいけない」と気を引き締めた。

 ふるさとドームには、訓練に参加した住民が次々と到着し、自衛隊が炊き出したカレーライスを試食したり、地震体験車や水消火器による消火訓練、自衛隊車両やヘリコプターの展示を見学した。

 訓練を見守った壮瞥町防災学識アドバイザーの岡田弘北大名誉教授(73)は2000年噴火から17年が過ぎ、前回噴火を経験した自治体職員が減っているとし「今回の訓練は、自治体の枠を超えて全体が見えた。非常時の対応のイメージができたと思う。噴火は突然くる。心構えが一番必要」と強調した。

 協議会長の菊谷秀吉伊達市長は「当時と比べ高齢化が進んでいる。自主避難ができるかが課題。行政の限界を住民の協力を得てどう乗り越えていくか」、村井洋一豊浦町長は「避難者の受け入れがわが町の役目。前回噴火時には渋滞が起きた。スムーズな避難経路の確保に取り組む」と課題を見据えた。

 合同災対の運営に奔走した協議会事務局の岡野淳・伊達市総務課危機管理室長は「平時の準備の大切さを改めて感じた。広域連携により情報を得て対応することで意識の統一、意思の疎通ができた。課題を整理したい」と振り返った。

 総合防災訓練は、2010年度(平成22年度)以来7年ぶり。有珠山は20〜30年周期で噴火するとされ、前回噴火から17年が経過し当時の噴火を知る自治体職員の減少や住民の高齢化、訪日客の急増など、変化への対応が求められる。
(野村英史、奥村憲史)


◆―― 児童を引き渡し
迎えに来た保護者に手を引かれる児童=3日午前10時、伊達市総合体育館
 伊達市長和小学校(葛西正敏校長、92人)は、校外への避難と、避難先で児童を保護者に引き渡す訓練を実施した。児童、保護者、教職員が非常時の対応に理解を深めた。

 訓練は午前9時15分に開始。全児童、全教職員が同校からバスに乗り松ヶ枝町の市総合体育館へ避難。訪れた保護者は、教職員による身分の確認を受けた後に児童と対面し、安心した様子で手を取るなどしていた。全校児童の約半数の世帯が協力した。

 訓練後の児童へのアンケートでは「家族が迎えに来なかったらと思うと怖かった」など回答があった。葛西校長は「普段の訓練以上の緊迫感があり、子どもたちはもちろん教職員もよい経験になった。今後も関係機関と連携を取っていきたい」とした。

 同校は本年度、道教委の「北海道実践的安全教室モデル構築事業」の認定を受け「有珠火山噴火を想定した防災教育」に取り組み、11月には公開研究授業を予定している。引き渡しは災害のほか、不審者や危険動物の出没・逃亡でも実施する。
(奥村憲史)


◆―― 外国人観光客を守れ
案内地図を頼りに自力で一時集合場所を目指す訪日観光客役の留学生たち=3日午前9時37分、洞爺湖温泉
 洞爺湖温泉では、急増する訪日客の避難誘導を想定した道運輸局主催の訓練があった。避難指示発令を受け訪日客役の留学生24人を宿泊先の洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラスから避難させる想定。

 午前9時半、防災行政無線のサイレンを合図にホテル従業員が館外へと誘導。留学生らは一時集合場所の洞爺湖文化センターまで、案内地図を頼りに歩いて移動した。館内での避難誘導は、多言語翻訳アプリを搭載したメガホンの操作に手間取って案内が遅れたり、宿泊者名簿による人員の確認作業が不十分といった課題が見られた。

 訓練後の意見交換会では「音声翻訳アプリなどを使った誘導や館内放送は日本語と比べ英語や中国語は情報量が少ない」「避難所までどの交差点を曲がればよいのか分かりづらかった。誘導看板が欲しい」「移動先が示されず不安だった。その都度伝えるべき」と工夫を求める声が相次いだ。

 日本工学院北海道専門学校(登別市)の韓国人留学生、ジョン・ドン・ヒョンさん(25)は「マニュアル化された訓練は素晴らしいが、客室に避難の仕方をまとめた案内が欲しい。片言でいいから誘導を優先してほしい」と注文した。

 同ホテルの宮崎健支配人は「年間宿泊客の45%が訪日客で、翻訳ツールなどを効果的に使いスムーズな誘導ができるようにしたい」、洞爺湖温泉旅館組合の三浦和則組合長は「訪日客の避難は、住民と同じ避難先でよいかということを含め検討の余地がある」と述べた。

 運輸局は今回の意見と訓練の検証結果を反映させた訪日客の避難誘導マニュアルを来年3月までに作成し、「洞爺湖温泉モデル」として全道に広げる方針。
(野村英史)

【写真=(上から順に)避難所にバスで到着した洞爺湖温泉地区の住民=3日午前10時18分、洞爺湖町月浦の洞爺湖温泉小学校、迎えに来た保護者に手を引かれる児童=3日午前10時、伊達市総合体育館、案内地図を頼りに自力で一時集合場所を目指す訪日観光客役の留学生たち=3日午前9時37分、洞爺湖温泉】




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