■ JXTG室蘭で社長が会見、19年3月に製造部門撤退
【2017年9月28日(木)朝刊】

室蘭製造所での製造停止を説明するJXTGエネルギーの杉森社長=27日午後2時45分ごろ、室蘭製造所
 石油元売り大手のJXTGエネルギー(本社東京)の杉森務代表取締役社長は27日、室蘭市陣屋町の同室蘭製造所で会見し、2019年3月末で室蘭での石油・石油化学製品の製造部門を撤退させる、と発表した。同年4月以降は石油製品の道内向け物流拠点となるが、事業所人員は30人程度に縮小される。東燃ゼネラル石油との経営統合後、初の合理化策。同製造所の従業員にも同日説明し、約230人の従業員は、転換後の事業所や他製造施設への配置換えで雇用を継続するという。

 会見には杉森社長、岩瀬淳一取締役常務執行役員製造本部長、豊永信広室蘭製造所長が出席。杉森社長は製造停止の判断について「石油製品の内需が減退する一方、東燃との合併でガソリンなど石油製品の生産余力が拡大した。室蘭単独の損益が赤字に陥り、経営上看過できなかった」と説明した。

 統合後の全国16カ所の製造ネットワークの最適化を検討する中で「室蘭の生産余剰がクローズアップされた。将来的に採算改善の見込みもなく、製造を停止する判断に至った。苦渋の決断」と述べた。

 製造停止後に転換する事業所では、京浜地区から運んだ灯油やガソリンなどの石油製品の受け入れ、備蓄、出荷基地として運営。「北海道を中心とする製品の安定供給へ万全の態勢を構築する」と述べ、事業所人員は30人程度を想定。現在10万キロリットルある灯油備蓄能力を3倍程度引き上げるなど、設備変更を計画する。

 転換後も当面、設備は維持する方針。同製造所は、180メートル集合煙突のライトアップなど、室蘭の工場夜景の中心的存在となっている。杉森社長は「できる限りの地域貢献はしていく。ライトアップも市から要請があれば検討する」と協力する姿勢を示した。
(菅原啓)


◆―― 「最終決定」に対応難しく

 【解説】JXTGは3年前、石化工場として生まれ変わり、順調に高付加価値化の取り組みを進めていくはずだった。しかし、これまでの説明を覆す「室蘭は赤字、生産終了」の突然の説明に、青山剛市長は不信感をあらわにした。

 確かに業界を取り巻く環境は厳しい。ガソリン需要減などで、企業は再編を繰り返す。この中で室蘭生き残りへの道が、ガソリンの生産を縮小し、石化製品原料輸出を強化する石化工場転換だった。

 しかし、狙い通りにならなかった。会社側は「見通しの甘さ」を認めた。東燃との統合が石化転換時に想定していなかったとはいえ「今回の決断は、JXTGの取り組みの失敗を意味している」(市議)との指摘もある。

 まちづくりへの影響を避けなければならない。協力会社を合わせた従業員は500人超。市の歳入にも余波が懸念される。工業出荷額は総額の半分。工場夜景は観光の目玉だ。影響力の大きさは石化転換時の20万人署名が裏付ける。

 青山市長は「約束が守られず残念。影響は甚大で承服しかねる。再考を促し、地域経済への影響を最小限に抑えたい」と語気を強めた。ただ、杉森務社長が「最終決定」を強調しているだけに、難しい対応が迫られそうだ。
(鞠子理人)


◆―― 地域経済に影響大

 JXTGエネルギー室蘭製造所は、2019年3月末で製品製造部門から撤退することとなった。物流は残るが、西胆振の経済的な影響は大きく、地元経済界や元職員からは「非常に残念」「ライトアップがなくなった場合、観光客が減少する懸念がある」など、地域経済やコミュニティーの縮小を懸念する声が上がった。

 室蘭商工会議所の栗林和徳会頭は「突然の発表で驚いている。協力企業や取引先、地域商業への経済的な影響は大きく残念でならない」と指摘。「経済界として継続や新規事業の展開などに関しての再考を求め、行政や関係団体と連携し対応したい」と話した。

 胆振総合振興局の早苗保穂副局長は詳細の把握の必要性を示し「地域雇用への影響は大きい。事業継続要請を含め、関係機関と連携して取り組む」とした。

 「関連企業の作業現場がなくなると商売に大きな影響が出る」と指摘するのは蘭北商店会の土田善一会長。「ライトアップも観光の大きな目玉。人が来なくなることが心配だ」と交流人口の減少も危惧した。

 町内会関係者からは地域コミュニティーの崩壊を懸念し、存続を求める意見が出た。白鳥台地区連合町会の上西英子会長は「多くの社員が白鳥台に家を建て、盆踊りなど町会の行事にも参加し、友好関係を築いている」と存続を希望。港北町会の須田貞文会長は「石油化学製品の製造に移行したときから心配はしていた。事業形態が変わらないようにお願いしたい」と力を込めた。

 「一報を聞いたときはとても寂しい気持ちになった」と残念そうに語るのは室蘭市白鳥台の元職員の男性(70)。従業員の配置転換による人口や経済面の影響などに触れ、「できれば現状のままで残してほしい」と願う。白鳥台の佐々木勝彦さん(78)は「いつかこうなるのではないかと思っていた」と厳しい表情。一方で「社会情勢を考えると致し方ない部分もある」と一定の理解も示していた。
(本社報道部)


◆―― 市が対策本部設置
「影響が大きく、発表は到底承服できない」と述べる青山市長=27日午後5時半、室蘭市役所
 室蘭市の青山剛市長は27日、市役所でJXTGエネルギー室蘭製造所の事業所化に関する記者会見を開き、庁内に特別対策本部(本部長・青山市長)を設置し、札幌や東京で要請を行う方針を明らかにした。

 対策本部は小泉賢一、東平伸両副市長、総務部長、企画財政部長、経済部長らで構成。同日夜の初会合で、再構築に至った原因の調査分析、関係機関への要請、同社へ再考要求などを確認した。要請は、早ければ今週末に札幌市内の関係機関、週明けには商工会議所や市議会とともに上京して同社などを訪れる方向で調整している。

 青山市長はこの日午後0時半から約40分間、同社の杉森務代表取締役社長と会談し「社長には二度三度と事業所化の再考を求めた」と語った。さらに「地域全体で存続要望を行い、今後も生産活動を行うシンボルとして集合煙突も塗装していただいた。相当額投資して事業再構築したのに(事業所化は)理解できない」と不快感をあらわにした。
(有田太一郎)


◆―― 議員からは苦言相次ぐ

 室蘭市議会は27日、JXTGエネルギー室蘭製造所の事業再構築に関する議員協議会を開いた。議員からは、市や同社への苦言が相次いだ。

 青山剛市長は冒頭「今回の進め方は信頼関係を失い、到底承服しかねる。水素関連事業の展開などを訴えた」と発言。オール室蘭で対応していく考えを示した。

 水江一弘議員(市民ネット・むろらん)は「市長が今後の話をしたのは少し早い。事業再構築を了解したと受け止められる」と疑問を投げ掛け、我妻静夫議員(市政協同)は「石油化学製品に高付加価値を付け、製造所で生きていくのが3年前の約束だった。ほごにされていることを問題視してもらいたい」と訴えた。

 南川達彦議員(市政協同)は「経済産業省や資源エネルギー庁から情報を取る動きはしていたのか」と質問し、和野泰始経済部長は「情報収集不足があったと反省している」と答弁。早坂博議員(新緑会)は「市と議会が一丸となって対策しないといけない。これから先のことを真剣に考えるべきだ」と強調した。
(有田太一郎)


◆―― 「赤字継続できず」 JXTG社長一問一答

 JXTGエネルギーの杉森務社長の一問一答は次の通り。

 ―なぜ室蘭だったのか。室蘭単体の収支は。

 統合後、室蘭の生産余剰が顕著となり、製造するガソリンの価値が下がってきた。室蘭の赤字を継続するわけにはいかないと判断した。

 ―決定を考え直す余地はあるのか。

 これが最終決定。25日に決済をした。

 ―見通しの甘さか。これを上回る情勢の変化か。

 室蘭の採算は悪くなるだろうということは想定していた。ただこんなに早く決断が必要になるとは思っていなかった。

 ―20万人の存続の署名があった。地域としては裏切られたとの思いもある。

 署名は十分認識し、非常に重く受け止めている。大変申し訳ないという気持ちでいっぱいだが、赤字のまま存続できるとは思っていない。できる限りの地域貢献もしたい。撤退するわけではない。


◆―― JXTG室蘭の変遷

1956年 日本石油精製室蘭製油所として開所

1999年 日石三菱精製

2002年 新日本石油精製

2010年 JX日鉱日石エネルギー

2016年 JXエネルギー

2017年 JXTGエネルギー

【写真=室蘭製造所での製造停止を説明するJXTGエネルギーの杉森社長(上)=27日午後2時45分ごろ、室蘭製造所、「影響が大きく、発表は到底承服できない」と述べる青山市長(下)=27日午後5時半、室蘭市役所】




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