■ ミサイル道内通過で西胆振の3市が対応苦慮
【2017年8月30日(水)朝刊】

弾道ミサイルの対応に追われる室蘭市=29日午前9時40分、市役所本庁舎
 北朝鮮のミサイルが29日早朝に発射され、道内上空を通過した際、西胆振3市では、全国瞬時警報システム(Jアラート)が鳴ったが、その対応に頭を悩ませた。初動から情報の収集や伝達などに追われる一方で、「基礎自治体では防ぎようがない」「攻撃に耐えられる施設がない」などの声が聞かれ、困惑が広がった。

 「ミサイル発射から10分程度で道内に到達するともいわれ、夜間、休日の情報伝達はどうすれば良いか」。室蘭市幹部は対応の難しさを口にした。

 ミサイルが日本に落下する恐れが出た場合、避難を促すJアラートによる警報音が鳴る。第1報段階で「ミサイルが発射されたもようです。頑丈な建物や地下に避難してください」と伝えられた。

 室蘭市は同日午前6時2分にJアラート警報を確認し、市国民保護計画に基づき青山剛市長をトップとする連絡室を設置。同日正午までに3回会議を開き、市内に被害が発生していない情報を庁内で共有した。

 初のJアラート発令対応に市防災対策課は「発令時の参集、連絡室立ち上げの態勢を確認できた」としつつ「効率良く迅速に情報を伝える方法」を課題に挙げた。ただJアラートが鳴った際、住民に「頑丈な建物」や地下などに逃げるよう呼び掛けているが「具体的な誘導方法」は定められていない。増市や中島、八丁平などで防災行政無線が聞き取れない住民もいた。

 登別市は昨年7月策定の市国民保護計画に基づき、防災担当職員が情報収集に当たり、防災行政無線や市公式フェイスブックで情報発信した。市は被害や落下物の情報はなく、計画で定める緊急事態連絡室は設置しなかった。

 伊達市も総務課危機管理室の職員が即応。武力攻撃による災害発生は認められず、計画に基づく連絡室は設置しない判断をした。

 ミサイルに耐え得る施設は他の自治体同様、市内に存在せず、避難に関する市民からの問い合わせの返答に窮した。情報収集も、国からの情報は限定的でできる対応は限られた。「ミサイル通過が武力攻撃に当たるか見極めが難しかった。基礎自治体レベルではミサイルは防ぎようがないと改めて考えさせられた」(同室)と苦悩をにじませた。
(本社報道部、中部支社、西部支社)


◆―― 室蘭地方の住民「どこへ逃げれば」
室蘭民報電子号外のコピーに見入る市民=29日午前10時ごろ、東町バスターミナル
 北朝鮮のミサイル発射直後に突然、不穏なサイレンとけたたましく携帯電話のアラームが鳴り響き、室蘭地域の住民もなすすべなく自宅のテレビに見入ったほか、漁業関係者も「どこに逃げれば良いのか」と困惑と不安が広がった。

 「娘が携帯電話を手に『大変、大変』と部屋に飛び込んできた。テレビをつけると文字だけの画面になっていて気味が悪かった」と語るのは、室蘭市栄町の自営業、信田有子さん(69)。「サイレンもアナウンスもはっきり聞こえたが、避難するにも逃げ場がない」とおびえる。

 室蘭漁業協同組合によると、ミサイル発射時、組合員は漁や沖の養殖施設で作業していた可能性がある。冨樫明博専務理事は「通知を受けても、現場と連絡を取り合う時間がない。無線のない小型船や携帯電話を持たない組合員もいる。海の上でどうしたら良いか分からない」と困惑。「津波なら避難や沖出しするなど対応もできるが、安全保障は個別対応の範ちゅうを超えている。国や道などで対策を検討してほしい」と注文をつける。

 登別市鷲別町の会社員、笠井勇史さん(59)は「携帯電話で発射の情報は分かり情報を集めたが、避難場所が分からなかった。普段から周知してほしい」と語った。

 室蘭市小学校長会の渡部哲事務局長は「登校中の児童の安全とスクールバスの運行の面で、市立の小、中学校の対応のガイドラインが明確な方が対応しやすい」とし、市教委に今後の策定の有無を問い合わせた。別の小学校長は「Jアラートに関する危機管理マニュアルの策定と周知の必要があると感じた。児童の安全確保のため、情報共有とマニュアル整備が必要だ」と指摘した。

 白鳥台あかつき町会の田村博文会長は「ミサイル対応で住民を避難させる態勢も体力も町会にはない。最終的には行政に避難先の指示などをしてもらうことになるだろう」と苦悩を口にした。
(本社報道部)


◆―― 室蘭市の対応

 無防備な自治体の虚を突いた北朝鮮による弾道ミサイル発射。29日、室蘭市の職員らは早朝から市役所に集まり、庁内は「有事」への緊迫感が高まった。午前7時までに幹部が参集した。室蘭市は西胆振自治体で唯一、「緊急事態連絡室」を設置し、関係官庁への情報収集と市民への情報伝達を実施した。室蘭市の対応をドキュメントで報告する。

 午前6時2分、緊急情報ネットワークシステム(エムネット)と、全国瞬時警報システム(Jアラート)作動。5分後、「室蘭市国民保護計画」に基づき防災情報を集約する「緊急事態連絡室」(連絡室長・青山剛市長)設置を決定。

 同6時半すぎ、厳しい表情の防災担当職員が相次ぎ登庁。

 同7時、同連絡室を立ち上げ、第1回会議を市役所を開催。防災対策課担当者が、増市町住民から津波警報サイレンによる「広報」が確認できたという情報があったことのほか、同6時半ごろから防災センター(東町)に1世帯4人が避難中で、自衛隊から被害情報がないことを伝えた。

 同8時10分、市民への情報伝達として市のツイッター公式アカウントを活用し「北朝鮮からのミサイル発射情報」とする情報を流した。

 同8時30分、第2回同連絡室会議開催。青山市長が「市民からの問い合わせも想定されるので、引き続き情報収集に努めていただきたい」と指示。

 同8時56分、市ホームページで「弾道ミサイル落下時の行動について」とする資料を公表。

 同9時36分、「室蘭沖南方海上85キロを通過」との自衛隊情報が市に入る。

 同11時40分、自衛隊北部方面総監部が地球岬で電波調査が可能かどうか調査すると報告あり。

 正午、第3回同連絡室会議を開催し、情報収集と分析結果報告。市に入った問い合わせ件数計8件、公共施設、インフラ被害なし。環境調査異常なし。今後の改善検討事項として、休日の情報伝達の課題残る。

 青山市長は「対応が適切だったか、改善すべき部分は今後の防災、緊急事態に臨んでいきたい」と総括し、警戒態勢を解くことを表明し解散。
(粟田純樹)


◆―― 苫小牧市危機管理室が情報収集に追われる

 苫小牧市では29日の北朝鮮ミサイル発射直後から、市危機管理室の全職員が庁舎に駆け付け、情報連絡態勢を午後2時半まで維持、市民からの対応や情報収集に当たった。これまでにけが人はなく、被害の報告は入っていない。

 危機管理室によると、Jアラートの直後から防災無線や避難などに関する19件の問い合わせが市民から寄せられたという。同室では道、警察、自衛隊、海保など関係機関と連絡を取り合い、情報収集を行った。

 また、苫小牧市議会は代表者会議を開き、北朝鮮に抗議する決議文の採択に全会一致で合意した。9月7日開会予定の市議会定例会の冒頭で採択する方向で調整している。

 市職員から報告を受けた岩倉市長は「異常な事態と受け止めている。市民の安心、安全のため最善を尽くす」と話した。市役所を訪れた市内の会社員の男性(46)は「Jアラートで起こされたが、どこに逃げるべきなのか、対応がよく分からない。非常識な行動はやめてほしい」と怒りをあらわにした。
(佐藤重伸)


◆―― 高橋知事がファクスの誤送信で謝罪

 高橋はるみ知事は29日の会見で、同日早朝に北朝鮮からのミサイル発射と北海道上空通過事案について改めて遺憾の意を示した。また、道から市町村に被害状況を確認するファクスを送信する際、「訓練」と書かれた書類を誤って送信したことについて謝罪した。

 知事は「北朝鮮により繰り返されるミサイル発射により、道民・国民の不安が増す中、今回のミサイルが北海道上空を通過したことは重大かつ深刻」と述べ、国に対し、改めて北朝鮮に国連安保理決議を無視しないよう強く申し入れる考えを示した。

 ファクスの誤送信については「この日は実際に弾道ミサイルを想定した訓練を予定しており、早朝ということもあり混同したのかもしれないが、あってはならないミス」と今回の件を問題視。この日の初動対応訓練と来月実施予定の住民避難訓練などを通し、準備態勢の確立を構築する考えを示した。
(北川誠)


◆―― 「Jアラート」一部携帯は受信できず

 全国瞬時警報システム(Jアラート)は、時間的に猶予がない緊急事態の発生を国民に伝え、迅速な避難行動を促すことが目的。休日・夜間など地方自治体の職員体制にかかわらず、国(総務省消防庁)が人工衛星や地上回線を使い、市町村防災行政無線(同報系)を直接自動起動させて情報を住民に伝達する。

 配信される情報は、弾道ミサイルや航空攻撃、ゲリラ・特殊部隊攻撃、大規模テロなど25。うち国民保護関係など11情報で同報無線が自動起動される。弾道ミサイルが発射されても、日本の領土・領海に落下したり、通過する可能性がないと判断された場合は使用されない。

 市町村の防災行政無線などと連動し、屋外スピーカーなどから警報が鳴るほか、携帯電話のエリアメールや緊急速報メールでも瞬時に伝えられるが、29日には一部の携帯電話では受信できないケースがあった。

 防災担当によると、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク(ワイモバイル含む)の大手通信事業者が提供するスマホは、緊急速報メールに対応しているが、「格安スマホ」の一部端末では受信できない恐れがあるという。

 受信不可の場合などは、無料のスマホアプリ「Yahoo!(ヤフー)防災速報」をインストールしたり、自治体の登録制メールの利用を呼び掛けている。
(有田太一郎、粟田純樹)

【写真=弾道ミサイルの対応に追われる室蘭市(上)=29日午前9時40分、市役所本庁舎、室蘭民報電子号外のコピーに見入る市民(下)=29日午前10時ごろ、東町バスターミナル】




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