■ 室蘭−宮古フェリー航路開設を川崎近海汽船が検討
【2015年3月11日(水)朝刊】

川崎近海汽船が開設を検討している室蘭−宮古フェリー航路
 大手フェリー船社の川崎近海汽船(本社東京、石井繁礼社長)が10日、室蘭―宮古(岩手県宮古市)のフェリー航路(325キロ)開設方針を発表したことで、2011年(平成23年)の東日本大震災で被災した宮古市復興、両港の施設整備促進、物流の拡大などが見込まれる。室蘭発着航路の10年ぶりの復活となる18年(平成30年)春に向けて、両市の関係機関・企業の動きが具体化していく。

 室蘭港発着のフェリー航路は、2008年11月末の室蘭―青森航路廃止でゼロに。以後、室蘭市はじめ室蘭商工会議所、室蘭港湾振興会などが首都圏、道内外で懸命の誘致活動を行ってきた。室蘭市は「航路が具体化したことで、民間のポートセールス、荷物確保が動き出す」と見通す。

 一方、宮古港は11年の東日本大震災で港湾施設が被災した。翌12年に港湾管理者の岩手県が同港を含む4大重要港湾の復旧・復興に向けた機能分担計画を策定。宮古港はフェリー発着港に位置付け、宮古市が14年に誘致実行委員会を立ち上げて誘致活動を展開してきた。

 大震災から4年となる11日前日の方針発表。同市の産業振興部産業支援センター港湾振興室では「現在、整備中の三陸沿岸道路、宮古盛岡横断道路が開通すれば、宮古港から県内各地、首都圏へのアクセスが大幅に向上する。そして、まちの復興促進、物流拡大、観光客増にもつなげたい」と大きく期待している。

 川崎近海汽船は室蘭―宮古航路の選定について「トラック業界から船内での休憩時間が長く取れる道内―東北間の航路を要望する声が強まっていた。また、室蘭港は噴火湾に囲まれた平穏な港であり、両港ともに近隣に国立公園などの観光地があって旅客需要が期待できる」と話す。

 同社は今後の宮古港の耐震岸壁建設などの整備状況を見極め、来年3月をめどに国土交通省に新航路許可を申請する。使用船舶やダイヤは未定で、今後詰めるという。同社のフェリー航路は苫小牧―八戸間に続いて2航路目になる。
(山田晃司、粟島暁浩)


 【川崎近海汽船】川崎汽船から内航営業権譲渡を受け、1966年(昭和41年)に設立。海外から木材・鋼材・雑貨などを輸送する「近海部門」と、RORO船やフェリーなどで国内の物流に対応する「内航部門」が事業の柱。フェリー事業では、73年開設の苫小牧―八戸航路があり、現在は1日4往復8便を運航。近年、シルバープリンセス(10536トン)やシルバーエイト(9483トン)など大型新造船を投入している。


◆―― 「10時間の航海」ポイント

 【解説】川崎近海汽船が室蘭―宮古のフェリー航路開設の検討に入った。大きなポイントに、10時間の航海時間設定がある。

 国はトラック事業者などの重大な法令違反の処分を厳格化。業務停止30日、営業許可取り消しまで及ぶため、ドライバーの労務管理の徹底が急浮上した。船内で8時間以上の休憩時間を確保したいが、苫小牧から八戸が8時間、仙台まで15時間。最適化された航路に業界の要望が高まっていたが、困難とみられていた。

 そこに東日本大震災の復興に向けた岩手県宮古市のカーフェリー誘致の動きが重なり「条件がかみ合った」(港湾関係者)。青山市長も公的場面で折に触れフェリーの発言が増え、状況好転をうかがわせた。

 室蘭市港湾部は昨年3月、室蘭港の活用に向け、道内発着の貨物動向を多角的に調査した結果をまとめた。フェリー航路を持たない港であっても、ポートセールスに説得力を持たせる基礎資料として活用。着実な積み上げも実った。

 航路開設予定は3年後。北海道新幹線の開業による物流の変化も見込まれる。航路撤退の痛みを知った室蘭だけに、存続に欠かせない荷物の安定的な確保が不可欠だ。道内からの出荷分は農水産品など季節変動が大きい。利用PRを含め、行政要望にとどまらず地元事業者主体の行動も求められる。
(粟島暁浩)


◆―― 「誘致活動最大の成果」、青山市長一問一答
室蘭港フェリーの歩み
 川崎近海汽船(本社東京)は10日、室蘭―宮古のフェリー航路開設を明らかにした。室蘭―青森航路の廃止以来、誘致に取り組む室蘭市の青山剛市長は「活動の成果。川崎近海汽船、宮古市、室蘭港フェリー航路誘致促進期成会を構成する西胆振の自治体・商議所・商工会に感謝したい」と語った。一問一答は次の通り。
(聞き手・有田太一郎)

 ―― 川崎近海汽船の発表をどう受け止めているか。

 「市民にとって室蘭港のフェリーは象徴的存在であり、航路の開設は率直にうれしい。東日本大震災から4年のタイミングで発表され、被災地の宮古市や岩手県も喜んでいると思う。被災地の復興に協力していきたい」

 ―― 青森航路の廃止以来、市単独や誘致促進期成会などによる誘致活動を続けてきた。

 「箱田厚港湾部長を中心とした市のポートセールスや期成会などによる粘り強い航路誘致活動を進めた最大の成果。関係した皆さんに感謝したい。フェリー航路は道内経済活動の玄関口。北海道や東北の物流に大きく寄与する」

 ―― 開設まで3年あり、施設整備も必要になる。

 「就航を確実にしていく活動がこれから重要。使用していないフェリーターミナルや可動橋の修繕が必要になるだろう。ソフト面でも荷役態勢などをしっかりと構築したい。周辺地域から貨物を集めるポートセールスも行う」

 ―― 市内への波及効果は大きい。

 「白鳥新道2期工事の促進に向けて、物流面からの観点がより深まる。公設地方卸売市場はフェリー撤退以後打撃を受けているとの話を聞いている。航路開設により、市場関係者も活性化に向けてさまざまなことを考えると思う」


◆―― 経済界からも期待の声

 川崎近海汽船が室蘭―宮古航路開設の検討に入った一報は、室蘭の経済界にも喜びが広がり、港湾活性化への期待感にあふれた。

 室蘭商工会議所の栗林和徳会頭は「定期フェリー航路開設は市にとって重要な課題で非常に明るいニュース。青山市長をはじめとする官民一体の誘致の成果」と強調。「宮古市とも連携し早急な受け入れ態勢構築やポートセールスなどに取り組み、早期開設を望みたい」と力を込める。

 「港湾業界に明るい展望が開ける」と語るのは、室蘭港湾振興会会長の盛田満・室蘭開発社長。「フェリーは清掃や給水、給油など多くの業者が関わる。働く場づくりにもつながる」と期待しつつ「課題は、本州向けの荷物をどう確保していくか。振興会で議論していきたい」と述べた。

 室蘭海陸通運の成田俊彦社長は「北海道新幹線の開通で、青函トンネルの貨物列車とのすれ違い問題など、物流の変化が予想される中でドライバーの休息時間が確保できる航路は意味が大きい」と指摘。室蘭地区トラック協会の関根淳専務理事は「航路の選択肢が増えることになり、良いニュース。室蘭の廃止で苫小牧西港が混み合い、乗れない場合は函館に走っていた。労務管理の課題解決につながる」と歓迎する。

 自民党の堀井学衆院議員は「宮古市と結ばれることで、震災復興と地方創生が両輪で進む。航路実現の先にはどう育てていくかが重要になる」とし、航路を成長させるための地域連携や行政支援の重要性を説いた。
(粟島暁浩)




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